ユーザーの検索キーワードに連動して表示されるリスティング広告は、日々の運用を基に改善を重ねることで、広告出稿の効果を最大化することが可能です。この記事では、リスティング広告を実際に運用している広告初心者を対象として、リスティング広告運用のよくある課題別に、どのような改善をおこなえばいいか、12の基本ポイントを解説します。
リスティング広告の改善において、まず、どんな目標に対して何が達成していないのか、課題を明確にする必要があります。
リスティング広告では、「キャンペーン」という単位で予算やターゲットを設定して、広告を管理します。キャンペーンは、商品やカテゴリごとの作成が一般的で、広告を配信する地域や期間、予算などをキャンペーンごとに設定します。さらにキャンペーンの中に、広告・キーワード・入札単価がセットになった「広告グループ」を作成します。
リスティング広告運用の成果を測る指標として、以下があります。
表示回数(インプレッション) |
広告が表示された回数 |
クリック数 |
広告がクリックされた回数 |
クリック率(CTR) |
インプレッションのうちクリックされた割合 |
クリック単価 |
1クリックにかかる費用 |
獲得数(CV) |
広告のリンク先LPでの申込や問い合わせなどの成果 |
獲得率(CVR) |
クリック数のうちCVに至った割合 |
獲得単価(CPA) |
CV1件にかかる費用 |
費用 |
広告運用全体の費用 |
広告の最終的な成果は、広告をクリックしてもらい、その遷移先のLPなどでCV(コンバージョン)を獲得することです。広告運用にあたっては、目標とするCVを達成するために、どのくらいのクリックが必要で、そのためにはどのくらいのインプレッションが必要なのか、目標とする数値をCVから逆算して設定します。
インプレッションのうちクリックされた割合を示すCTR、クリック数のうちCVに至った割合を示すCVRは、いずれも業界によって平均が大きく変動します。WorldStreamによる調査「2021 Paid Search Advertising Benchmarks for Every Industry」によると、CTRの平均は3.84%~10.67%、CVRの平均は3.25%~19.19%となっています。
こういったデータも参考に最初は仮で指標を設定して、運用しながら成果に応じて調整していくと良いでしょう。目標数値に対して達成率が低い指標が課題となります。
課題となる指標がいくつかある場合は、優先順位をつけます。CVRは高いがインプレッションやCRTが低い、CRTは高いがCVRが低いなど、その指標を改善することで成果につながりやすいものから優先して改善を行います。
リスティング広告の成果とはCVを獲得することなので、CV・CVR・CPAは特に重要な指標となります。また、これらは予算設定にも大きく影響します。
そして、CV・CVRを伸ばすためにはクリックが必要ですし、クリックを獲得するためにはインプレッションが必要です。また、CPAを下げるためには、CVRを上げる他にクリック単価を下げる方法もあります。
各指標の関係性を踏まえ、優先度の高い課題から改善を行いましょう。
インプレッションがないと、そもそもクリックやCVの数が伸びませんが、ただインプレッションが多ければ良いというわけでもありません。大切なのは、最終的にCVにつながるインプレッションを多く獲得することです。
そのため、CVRや、CVに至る前段階のCTRが高いキーワードやグループについて、優先的にインプレッション改善に取り組みましょう。具体的な改善ポイントは次の通り。
リスティング広告は、ユーザーが検索するキーワードに応じて表示されます。広告の表示回数が少ない場合、そもそもユーザーがよく検索するキーワードを設定できていない可能性があります。検索ニーズのある広告に関連するキーワードが設定から抜けていないか、調べてみましょう。
キーワード選定には、ユーザーの実際の検索キーワードが分かる検索クエリのレポートや、キーワードプランナーなどのツールが役立ちます。また、商品・サービスの強みや特徴を表すキーワード、検索サジェストなども参考になります。
リスティング広告では、ユーザーの検索がどの程度設定キーワードに一致した場合に広告を表示させるかという「マッチタイプ」を設定できます。マッチタイプには下図のような種類があり、「部分一致>フレーズ一致>完全一致」の順でインプレッションが増えます。
ただし、フレーズ一致や部分一致は検索ニーズが異なるユーザーにも広告が表示されやすくなるため、クリックはCVに至らないことが増え、CTRやCVRが下がるリスクもあります。最初は完全一致で成果を見て、CTRやCVRが比較的高いキーワードについて、フレーズ一致や部分一致を試してみると良いでしょう。
リスティング広告が表示されるためには、掲載順位を上げる必要があります。広告の掲載順位に大きく影響するのが「入札単価」です。入札単価を上げることで、上位表示がされやすくなります。ただし、その分コストも上がるので、キーワードやグループを厳選して調整する必要があります。
掲載順位をあげるための参考になるのが「品質スコア」です(Yahoo!広告では「品質インデックス」)。品質スコアは以下の3点から算出されます。キーワード単位で1~10の数値で示され、広告品質の目安となります。
CTRは、その広告がユーザーの検索ニーズに合っているかを示しており、リスティング広告の品質スコアにも影響します。特に、CVRが良いグループやキーワードは、クリックしてもらえれば成果が上がる可能性が高いので、優先的にCTRの改善に取り組みましょう。CTRの改善ポイントとしては、次のようなものがあります。
表示された広告をユーザーがクリックするかどうかは、広告文で決まります。広告文でまず重要なのは、検索キーワードと関連のある文章を設定することです。その上で、ユーザーの検索ニーズに応じた、思わずクリックしたくなるような文章を作成することが重要です。
画像出典:About text ads - Google Ads Help
広告文は、上画像のように、URL・見出し(全角15文字以内)・説明文(全角45文字以内)で構成されます。見出しは3つ、説明文は2つ設定できます。
見出しには、検索キーワードを入れるようにします。その上で、商品・サービスの強みや特徴が分かりやすく、ユーザーに共感してもらえる広告文になっているか、見直しましょう。「○○%割引」などの「数字」、「期間限定」などの「限定」表現は、クリックにつながりやすい表現です。
CVRは目標を達成しているのにCTRが低い場合、広告文や遷移先のLPはユーザーのニーズに合っているものの、広告を出稿しているキーワードがユーザーの検索ニーズとズレている可能性があります。その場合は、キーワード選定を見直しましょう。
キーワード追加するときのように、検索クエリやキーワード選定ツールを活用する他、広告文やLP上でのユーザー行動からニーズのあるキーワードを見直すことができます。
CVにつながらないと、いくらコストをかけても成果が出ていないことになります。特に、クリック数はあるのにCVに至っていない場合、費用は発生しているのに成果につながっていないことになり、早急に改善が必要です。
リスティング広告では、次のように広告を表示するターゲットを設定できます。
これらの設定について、商品・サービスのターゲットとズレがないか確認しましょう。
上記に加えて、「検索広告向けデータ セグメント」を活用することで、自社のWebサイト訪問者とアプリユーザーを対象に、キーワード設定や入札単価の調整が可能です。また、「入札単価調整」により、ユーザーが検索を行う場所、時間、方法に応じて単価を変動させて広告表示頻度を調整することができます。
広告文に興味を持って広告をクリックしてくれたユーザーが、ランディングページに来て「何か違う」と感じると、離脱してしまいCVにつながりません。
そうならないために、広告文で訴求・説明していることとランディングページの文章・画像に食い違いがないか確かめましょう。食い違いがある場合は、事実に基づいて訴求・説明を統一します。また、広告文で訴求・説明したことがランディングページにも記載されているか確認します。記載がない場合は追記しましょう。
ランディングページの平均滞在時間が一定時間あり、きちんと閲覧されているのにCVRが低い場合、CVポイントが分かりにくいか、CVが適切でない可能性があります。
まず、「申込」や「問い合わせ」など、CVに至るボタン(CTA)がランディングページを閲覧しているユーザーにとって分かりやすい場所に設置されているか見直しましょう。ボタンは押されているのにフォームで離脱が起きている場合は、フォームの見直し(EFO)も必要です。
また、価格の高い商材・サービスの「申込」や「購入」はハードルが高いため、「無料体験」や「資料請求」など、よりハードルの低いCVにすることで、CVRが上がることもあります。同時に、次のステップである「申込」や「購入」を促す施策も行います。
広告文に対してランディングページの内容に食い違いや不足がなく、CV設計を見直してもCV数が伸びない場合、ランディングページ全体の改善が必要かもしれません。その場合、次のような点を見直しましょう。
ランディングページの改善には時間と費用がかかるため、まずは改善ポイント7・8に取り組み、それでもCVRが伸びない場合に検討しましょう。
予算の消化が早すぎて想定していた期間より先に広告が表示されなくなる、広告出稿の成果は出ているが予算をオーバーしている場合、次のような対策を行いましょう。
入札単価は広告1クリックに対して支払い可能な上限額です。入札単価を上げれば広告掲載順位が上がり、広告の表示回数が増え、それに伴いクリック数が増えますが、コストも上がります。入札単価を下げれば広告掲載順位が下がり、広告の表示回数が減り、それに伴いクリック数も減りますが、コストを抑えることができます。
入札単価の設定の基準となるのがCVRです。基本的に、CVRの高いキーワードは入札単価を高めに設定して、CVRの低いキーワードは入札単価を低めに設定します。また、広告掲載順位や競合他社の状況なども確認しながら、こまめに調整する必要があります。
設定した条件を基に入札単価が自動で調整される「自動入札」という方法もあります。
広告出稿しているキーワードの数が多いほど、広告の表示回数が増えやすく、クリック数も増えるのでコストが上がります。
コストがかかりすぎている場合、CVRが高いキーワードやグループに優先的に予算をかけるようにしましょう。たとえコストがかかってもCVが獲得できていれば意味があります。一方で、クリック数が多いのにCVにつながらない、CTRは高いのにCVRの低いキーワードやグループの広告出稿を止めることで、成果を保ちつつコストを削減できます。
また、表示やクリックはよくされるけれどCVにつながりにくいキーワードは、あらかじめ「除外キーワード」として設定しておきます。これにより、そのキーワードに対して広告が表示されることがなくなり、CVにつながらない費用発生を避けられます。
広告出稿のコストが想定よりかかっていても、CVRが高くしっかり成果につながっている場合は、コストをかける意味があります。入札単価やキーワード選定の見直しを行なった上で、CVRが高くCPAの目標が達成できている場合は、予算を拡大することでさらなる売上アップが期待できます。
リスティング広告運用で思ったような成果が出ていない場合、本記事で紹介したように、まずは目標に対する課題を見つけることが重要です。課題が見つかったら、本記事で課題別にポイントを解説したように、改善のために何を行なえば良いのかが分かりやすくなります。
目標とする指標が適切かどうか分からない、課題は分かったものの具体的な対策がうまくいかないといった場合、運用を行いながら知識やノウハウを蓄積していくこともできますが、すぐに成果につながる対策を行いたい場合は、広告運用を専門とする外注パートナーの支援を受けるのもひとつの方法です。支援を受けて成果を出しながら、知識やノウハウを育てていくこともできます。
ディレクターバンクの広告運用代行では、経験豊富な広告運用ディレクターをアサイン。広告出稿の企画から、リスティング広告やSNS広告の運用、効果測定、改善業務まで、ワンストップで代行させていただきます。
リスティング広告運用で成果を出すための8つのコツ
検索キーワードに連動するリスティング広告。配信の対象ユーザーや予算、クリエイティブをリアルタイムに変更できる運用型広告の一種です。その大きな魅力は、運用を基に改善を重ねていくことで、広告出稿の効果を最大化できること。本記事では広告初心者を対象に、リスティング広告で成果を出すための8つのポイントを解説します。