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ネット通販、Webマーケティングから『源氏物語』まで。守備範囲は幅広く 編集ディレクター・ライター 河村郁恵さん

編集ディレクター/ライター 河村 郁恵(かわむら・いくえ)さん

ディレクターバンク株式会社は、企業のWebマーケティングを顧客視点で最適化し支援する、企画・運用会社です。様々な分野の才能あふれるディレクター陣が、企業の担当者様とチームになって、日々Webマーケティング課題の解決に挑んでいます。

このコーナーでは、そんなディレクターバンク所属の多彩なWebディレクターにインタビュー。得意分野から個人的な趣味趣向まで、その魅力をご紹介します。 今回は、クライアントの課題に真摯に向き合う編集ディレクター・ライターの河村郁恵さんをご紹介します。

PROFILE

編集ディレクター/ライター
河村 郁恵(かわむら・いくえ)さん

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2017年よりフリーランス。幅広くWeb・紙媒体の記事ライティング・編集を行う。丁寧で確実な仕事に、クライアントからの信頼も厚い。事業会社でのネットショップ運営や、EC業界向けメディア運営経験にもとづくWebマーケティング関連記事に定評あり。京都大学文学部卒。山口県出身。

ネット通販運営を経て、ライターとして独立

――Webマーケティングをはじめ幅広いテーマでコンテンツ制作に関わっておられるとのことですが、まずはご経歴を教えていただけますか?

河村さん:学生のころまでさかのぼると、もともとは国文学の研究者になりたくて大学や専攻を選んだのですが、大学でいろいろな経験をするうちに、企業に就職して働くのも面白そうだなと思うようになり、最終的に京都に拠点を置いていたネット通販を主体とする事業会社に就職しました。

そこは、日本におけるEC(Electronic Commerce)のはしりからネット通販をしていた会社で、カスタマーサポートから、商品開発、プロモーション、商品紹介コンテンツの作成等、ネット通販の運営に関わる業務を幅広く経験しました。

その会社の東京支社ができたタイミングで東京に移ったのですが、出会いがあってEC業界向けのメディア会社へ転職。Webメディアと紙媒体双方の編集制作業務を経験しました。

その後、結婚を機に生活環境が変化したことや、文章を書く仕事でもっといろいろな分野に携わってみたいということを考えて、ライティング・ディレクションを主体にフリーランスとして独立しました。結婚して自宅と職場が遠くなったので、通勤で長時間満員電車に乗らなければいけなくなったのが嫌だった、というのも背景に少しあります(笑)

ありがたいことに、前職のつながりでお仕事を紹介していただいたりで、現在に至ります。

――現在は、主にどのようなお仕事をされていますか?

河村さん:ライターとしては、企業のWebオウンドメディアを中心に取材記事・調査記事やコラムの執筆を行っています。編集者としても、Webメディアや紙媒体のコンテンツ制作に携わっています。メディアの運営側として、ライターさんに発注、原稿チェックなどを行うことも多いのですが、自分がライターとしても仕事をしている経験が活きていると感じます。

扱うテーマとして多いのは、Webマーケティング関連や、EC・ネット通販系、キャッシュレス決済など。ディレクターバンクの仕事では、企業のWeb担当者の方にサービスにまつわるノウハウを伺うことが多いです。このほか、クライアントの課題に応じて幅広く対応します。

編集・ライターとしての担当領域を明確に

――企業のオウンドメディア編集支援のプロセスでは、どういった点を心がけて取り組まれていますか?

河村さん:クライアントの状況によりケースバイケースですが、既存メディアなどで、クライアントの希望・要望がはっきりしているケースでは、まずはそれを汲んだ上で、進行しながら微調整をしていくことを心がけています。

例えば、具体的な題材や構成が決まっている記事作成の依頼をいただいても、取材や調査を進めるうちにクライアントの希望・要望と齟齬が出てくる場合があります。そんなときは、そのまま無理に進めるのではなく、状況を丁寧に説明し確認しながら調整を進めます。知見に基づく意見や提案だとしても、初めのうちから押し売りしては上手くいきません。

また、スケジュール的に急いでいらっしゃる方が多いのですが、そういうときほど全体スケジュールを意識しながら確実に担当領域のスケジュールを厳守できるよう調整を行います。

一方で、やりたいことがふわっとしている相談もあります。そのようなケースでは、クライアントは「テーマ的にはこういう記事をつくりたいんだけどどうかな」といった曖昧な状態なので、クライアントの課題を紐解きつつ、記事を制作するプロセスをきちんと説明して、対応できる作業工程・領域を明確にすることを心がけています。

最初は記事一本の制作依頼でも、そこから始まって対応領域が広がって、メディア全体の運営に関わるケースも出てきます。オウンドメディアの場合、メディア全体のPVは欲しいけれど、興味本位の人ばかり集めても顧客獲得にはつながりません。記事単体としてPVはとれたとしても、それが顧客獲得につながるのか? メディアとしての質のバランスはどうなのか? クライアントと議論しながら、PDCAを回しながら進めていきます。

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なお、「記事」とひとくちにいっても、事実関係を調査してまとめた客観性の高いものや、ライターの知見を盛り込んだオリジナリティが必要な記事など様々で、求められる質も異なります。クライアントが記事制作に何を求めているのかという点には、この質の部分も関わります。

記事制作やメディア運営のお手伝いをしていると、「良いライターがいない」というお悩みを聞きます。私自身、編集担当としてライターに発注する側になるときもありますが、たしかに良いライター探しは難しい課題です。

ライターというのは、極端な話、日本であれば日本語が話せて書ければ誰でも名乗れてしまいます。良いライターがいないと感じる場合、様々な要因が考えられますが、ひとつには条件の問題があると思います。求めるライティングの質やレベルと条件が合っていない可能性があるかもしれません。

成功体験を共有することで、より良い未来へ

――具体的な対応事例として、現在・過去のプロジェクトで、印象に残っている案件について教えてください。

河村さん:駆け出しの頃に、自分のペースが分かっておらずスケジュールを詰めこみすぎて、詰めの甘い原稿を納品してしまったことがありました。それで結局、修正対応がものすごく大変でした。それ以来、自分の今のペースを知ることと、想定ペースより余裕のあるスケジュール設定を意識しています。また、発注する側としては、ある意味「本当の締め切りは教えてはいけない」というのを肝に銘じるようになりました。

もっとうまくやれなかったかなと悔やまれるのは、これもフリーランスになって初期の頃の経験ですが、決裁権のある方からの依頼で、現場的にはトップダウンで下りてきた状況で現場に入った案件です。決裁者様と現場担当者様との思惑にズレがある中で、前任からの引継ぎでゴタつきながら、現場担当の方とのコミュニケーションはチャットがメインで不十分なまま走り出し…結局、双方気持ちがこじれて案件の進捗にも支障をきたしたところがありました。最初のすり合わせがめちゃめちゃ大事だと痛感した事例です。

何にせよ、スケジュール的にも気持ち的にもバタバタすると、良いことがないです。限られたスケジュールの中でも、いかに余裕を作れるかというのが大事です。

逆にうまくいくことが多いのが、記事の内容や成果をフィードバックしていただけるケース。制作内容について良し悪しの確認になり、クライアントが良いと思う方向性が分かることで、次の記事制作がよりスムーズになります。そして何より、ライター側の心情としてモチベーションが向上します(笑)

文字好きにも、動画が浸透してきた。

――編集者・ライターとして、様々なテーマで調査をしたり読んだりされていると思いますが、ユーザーとして注目されているホームページやWebサービス・アプリ等がありましたら教えてください。

河村さん:幅広いテーマで記事制作を対応させていただいているので、初めてのテーマにも出くわすこともよくあります。でも、情報って、ほとんどの場合、調べるとどこかにあるんです。情報を簡単に鵜吞みにしてはいけませんが、その出典をたどっていくとほしい情報に出会えることが多い。

また、ネット通販の運営に携わっていた時に骨身にしみたことですが、大半の人って、驚くほどそこに書いてあることを読んでないんですよね。人は、読んでない(笑)

自分もそうですが、目に触れていても脳で認識しておらず読み飛ばしてしまっていることが多いんです。それで後から読み直して、「あ、ここに書いてあった」と発見する。

そんなことも思いながら日々、あれこれ読んだり調べたりするなかで、今さらですが、最近あらためて『Twitter(ツイッター)』が面白いですね。雑多に情報収集するのに面白いです。頻繁に情報発信している著名な人をフォローして、その方が紹介した情報を辿ったりしています。最近Twitterは、音声チャットルーム「Spaces(スペース)」を始めたり、縦長サムネール表示に対応したりと、どこに向かってるんだ?って感じもしますが。

あとは、こちらもすごく今さらですけど、『YouTube(ユーチューブ)』。というのも、私はもともと動画が苦手だったんです。テキストを読むほうが速いし、自分のペースで進めて待たなくていいので、情報収集にはテキストのほうが好きなんです。でも、なんとなく観る対象としての動画が面白いんだなと、やっと最近気づきました。文字ばっかり読んでいても疲れますし(笑)

ラジオも好きでよく聞きますが、ニッポン放送のオールナイトニッポン系の番組と連動している『smash.(スマッシュ)』も利用するようになりました。smash.は、スマートフォンで利用する短尺のバーティカルシアターアプリです。

動画に興味が出てきたこともあって、動画配信サービスもいろいろと試しています。民法テレビ番組の無料配信サービス『Tver(ディーバー)』はよく利用しています。テレビ番組の予算のかけ方や制作力はやっぱりすごいなあと思います。また有料のサービスも一気に複数登録してみたことがあるのですが、今は『Hulu(フールー)』に落ち着いています。これはもう好みですが、自分が観たいコンテンツのアーカイブが多くて、以前はあまり観なかったバラエティ番組などをよく観てます。ライター・編集者らしくまとめるとすれば、私のような文字好きにも、動画が浸透しつつあることを感じる……というところでしょうか。

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人の気持ちは、千年前も今も変わらない

――お仕事以外で趣味や、今後の夢・やりたいことがあれば教えてください。

河村さん:最初に話が戻りますが、大学では『源氏物語』を中心に王朝文学と言われる分野を研究していました。『源氏物語』との出会いは、小学校4年生のとき。初めて読んで夢中になりました。子供たちがディズニーのキラキラに憧れるように、私は十二単とかに憧れたんです。

大人になった今では、人間の感情がすごく面白いです。当時の倫理観とか価値観は現代とは違うのに、人の心って千年も前でも同じなんだなと。アニメとか萌えのはしりなんじゃないかとも思っています。

大学卒業後は、研究というほどではありませんが、関連する研究者や団体などをフォローして趣味として最新情報をチェックしています。

それから、文章を書くことがやはり好きなので、自分の文章を書くことも続けたいです。お仕事で文章を書いているだけだと自分の文章がどんどんヘタになるので、日記や読書記録、日々思ったことなど自分の文章も書くようにしています。自分の言葉を忘れないようにする、というか。

また、趣味でベリーダンスをしています。京都にいたころからヨガをやっていたのですが、私の場合、ヨガだけだと内向的になりすぎるという感覚があって。それで、発散するようにベリーダンスを始めたんですが、良い先生との出会いもあって5年くらい続けています。発表会というほどではないですが、アラビア語でホームパーティを意味する「ハフラ」といって飲食店などで踊りを披露する機会に参加しています。

――最後に、Webマーケティングにお困りの企業担当者様へメッセージをお願いします。

河村さん:困ったことがあったら、ぼんやりしていても良いので早めに相談することがオススメです。相談内容がまとまってからと思ってると、どんどんスケジュールがしんどくなって、できるものもできなくなってしまいます。「困ってるんです」だけでも良いので相談すると、何をするにしても速く進むし楽です。

調べてみれば情報は転がってるけど、調べて分からなかったらすぐ分かりそうな人に聞く。分からない用語が出てきても気にせず聞いて大丈夫です! Webマーケティングって横文字多いですし、分からなくて当然くらいの気持ちで、ご相談お待ちしております。

編集ディレクター/ライター 河村 郁恵(かわむら・いくえ)さん

撮影:原地 達浩