検索エンジンから顧客を呼び込む! コンテンツマーケティング~SEO記事のつくりかた
ディレクターバンク(略してディレバン)の烏田です。アメリカのタレント、キム・カーダシアン・ウェストさんが、自身のプロデュースした補正下着ブランドを「KIMONO」と名付けて2019年6月に発表したところ、国内外から「文化の盗用だ」など猛反発を受け、翌7月にはブランド名を変更することを表明しました。
Twitterなどで発信された様々な抗議コメントの中で印象的だったのが、“kimono”というキーワードで、この補正下着のサイト(kimono.com、現在はアクセス不可)が検索上位に来ること、そしてkimono=下着というイメージになってしまうことを懸念したものでした。
検索結果のトップが、いまやブランディングのためにも重要なメディアであること、その中でSEO対策がますます重要性を増していることを、改めて感じたのです。
ディレバンでも、多くの企業様より自社のコンテンツマーケティングにおけるSEO対策について、お問い合わせをいただきます。
そこで、今回は、ディレバンのオウンドメディア『Web担当者のための見積もり相場ガイド(以下、見積もり相場ガイド)』編集長・平尾美絵さんに、効果的なSEO記事の作成方法をぶっちゃけ質問!
ひやかしではない、確度の高い見込み顧客を、自社サイトに誘引するためは? 狙ったキーワードで顧客を呼び込むための記事づくりの考え方とは?
マーケティング視点でのコンテンツ設計で、『見積もり相場ガイド』をSEOに強いメディアに育て上げた平尾編集長に、貴重なノウハウを教えていただきました。
SEO記事の作り方[1]その記事を書くことの意味を考えよう
コンテンツマーケティングを実施したいというと、「SEOを強化したいから」「自社サイトへのアクセス数を増やしたいから」など、自社をPRしたいという自社目線の話を聞くことが多いです。
でも、そもそも、その記事の目的はどこにあるのでしょうか? 記事のSEOを考えるとき、SEOそのものが、目的になってしまってはいないでしょうか?
コンテンツマーケティングの最終的な目的は、もちろん自社の利益のためですが、その記事自体は、自社のためではなく、潜在顧客が抱える課題を解決するためのものであるはずです。
そこを考えて記事を制作していけば、単なるSEOテクニックは、実は必要なかったりします。潜在顧客が知りたいことを書いていれば、その記事には、自ずと盛り込みたいキーワードや共起語が網羅されているはずなのです。何より、今のGoogleは小手先のキーワード対策では判断しなくなっています。
だから、コンテンツマーケティングにおける記事制作は、“潜在顧客が抱える課題を解決する記事”というところからスタートするべきです。まずは「自社」ではなくて、「顧客」です。
数学のように万人に共通の答えがあるわけではありません。やるべきことは、Googleを分析したキーワードの抽出ではなく、記事のターゲットである自社の潜在顧客のペルソナ分析と、その各ペルソナの課題を浮き彫りにすることです。
SEO記事の作り方[2]キーワードは、カスタマージャーニーから探そう
例えば、『見積もり相場ガイド』の場合、“MAツールの料金相場を伝えたいから、MAツール関連の検索キーワード・ボリュームを調査して対策キーワードを決める”というキーワード選定の方法だと、その記事ではユーザーの課題の本質が解決しない場合があります。
自社目線のありがちなキーワード例
- 中小企業向け MAツール
- Web制作 相場
『見積もり相場ガイド』で行っていることは、ターゲットのペルソナ分析から導き出したカスタマージャーニーを辿って、それぞれのフェーズで接点となるキーワードを掘り起こしていくというアプローチを取っています。
もちろん、コンテンツマーケティングを展開する企業の中で、自社の視点で狙いたいキーワードはあってしかるべきです。ただし、そのキーワードが、ペルソナのカスタマージャーニーにおいて、どのタイミングで現れるキーワードなのかを考えることが、非常に重要なのです。
SEOキーワード選定の考え方
例えを変えて、考えてみましょう。ディレバンのデジタルマーケティング運用代行サービス「Web担アシスト」の潜在顧客にリーチするための記事を作ろうとしているとします。最終的な目的は、「Web担アシスト」の新規顧客の獲得です。
ターゲットを、ホテルのデジタルマーケティングの担当マネージャーとします。そのホテルの担当マネージャーの業務上のステータスや課題、悩み、環境などをペルソナとして書き出していきます。空想や妄想ではなく、現実的なデータや、自身の経験などをもとに、リアルなペルソナを描いていきます。細かければ細かいほど、具体的で効果的なキーワードを見つけやすくなります。
ここでは、この担当マネージャーは、上司から「ホテルの新規顧客獲得のために、インスタグラム・マーケティングを試してみよう」という指示を受けたと想定します。
続いて、そのペルソナのカスタマージャーニーを書き出していきます。ペルソナは、ひとまず検索してインスタグラム・マーケティングの概要を知ろうとするだろうか? 運用会社に外注しようとするだろうか? SNS広告を出してみようと考えるだろうか? など、業務上の行動の段階ごとの行動や思考をカスタマージャーニー・マップとしてまとめるのです。
<「カスタマージャーニー・マップ」のイメージ>
横軸は、「行動の段階=カスタマージャーニー」(認知→関心→行動→コンバージョン)です。縦軸には、そのカスタマージャーニーを肉付けする様々な要素を入れています。
このようにして、ペルソナのカスタマージャーニーを整理していくと、ターゲットの課題とキーワードが見えてきます。
ここでの例でいえば、そのキーワードは、おそらく単純な「インスタグラム 運用」ではなく、認知の段階としてまずは「インスタ マーケティング」や、「インスタグラム 広告」などのキーワードで入り込んでいく必要があるということに気付くのです。
キーワード選定にあたっては、自社目線の目先のキーワードに飛びつかず、ペルソナの気持ち、行動を深堀したところから見えてくるキーワードが大切です。
キーワードは、波及していく
また、さらに分析を深めていくと、キーワード候補は、より広い範囲に広がっていきます。
最初は、「インスタ マーケティング」など、ターゲットの課題解決に直結する狭いところからスタートしますが、ペルソナのカスタマージャーニーを網羅する記事群が出来上がった後は、だんだんとその周辺にも範囲を広げ、当初のターゲットのステークホルダー(上司や意思決定者など)などへも波及するキーワードが出てくることになります。
<波及するキーワードのイメージ>
こうして整理したペルソナごとのカスタマージャーニー・マップは、記事公開後の内容見直しにも有用です。
SEO記事の作り方[3]次の目的地へ導くことを忘れずに
コンテンツマーケティングにおいては、自社のWebサイトに流入してくれたターゲットに、次々と関連記事を読んでもらうことで、顧客育成(ナーチャリング)していくことが理想的です。
このために、レコメンドエンジンなどを使用して、自動的に関連記事を掲出しているケースも多いでしょう。
ここで気を付けたいのが、関連記事をキーワードやカテゴリを軸にただ自動的に出すのではなく、ペルソナに合わせた関連記事を、ページごとに有機的な言葉を添えて個別でリンク設置するということです。
その記事を読むことで、ひとつの課題は解決したが、その先には、また次のステップの課題があるはずです。その次なる課題の気づきや解決につながる記事を用意して、丁寧に導くのです。ここでも、最初に整理したカスタマージャーニー・マップが大いに役立つでしょう。
SEO記事制作は、単なるキーワードのマッチングではなく、顧客の課題解決のためのコンテンツづくりなのだという考え方からスタートすれば、結果はついてくるはずです。
教えてもらった方
平尾 美絵さん
Webディレクター/『Web担当者のための見積もり相場ガイド』編集長
世界最大級人材サービス会社にてWebディレクター9年、本社オランダ・世界各国事業部とのコミュニケーション担当を経て、2人目出産のタイミングで退職し、2012年よりフリーランスとして独立。川崎市経済をワクワクさせる会社ノクチ基地経営。2017年より、『Web担当者のための見積もり相場ガイド』編集長